東京・目黒の自転車文化センターで開催中の「THE KEIRIN展」を見てきました。

 

jitensha bunka center

 

自転車文化センターは、財団法人日本自転車普及協会が運営する総合施設で、希少な自転車や関連文献の管理や研究をおこなっています。定期的にテーマ展示をおこなっていて、一般の人も自由に内覧できる施設となっています。

 

cycle culture center

 

2022年12月14日から「THE KEIRIN展」と題して、テーマに沿った歴史的な競技車両の現車が展示されています。自転車には説明パネルが添えられ、競輪や自転車に関心のない方でも分かるようになっています。

 

keirin uniform

 

本ブログでは2021年に同施設で開催された「競輪の魅力展」を紹介しましたが、前回はどちらかというとフレームビルダーに焦点があてられ、今回は主に全国にある「競輪場」を展示テーマとし、「推し」ポイントを紹介していました。

競輪は日本生まれの世界スポーツで、戦後間もない1948年から全国各地で公営され、2000年のシドニー五輪からは正式種目として採択されています。国内では着順を予想するギャンブルとして43競輪場にて競走が開催されています。

 

karavinka

 

競輪場はすべて円形走路でバンクの周長は333.3~500m、入場料も無料から100円と各施設バラバラで統一されたルールがありません。競馬には地方競馬と1954年から始まった中央競馬(JRA)の2つが併存しますが、競輪は歴史的経緯からどちらかというと地方競馬に近い性格を持ち、各地の主催が異なるためその結果として周長が異なるバンクが建設されました。62年には中央組織の前身となる「日本自転車競技会」が発足、2008年には同じく公営競技のオートレースを実質的に吸収する形で「JKA」(Japan Keirn Autorace foundation) として事業を統括しています。

始まったばかりの時期はスポーツ自転車でない実用車レースなども行われていたそうですが、現在では「トラックレーサー」と呼ばれる変速のない自転車がレースで使用されています。使用機材の審査は厳格に行われ、フレームは国内の26ヶ所の登録事業者が製作したものに限定、部品ひとつに至るまで審査を通過した登録業者が生産した製品が使用されています。

 

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スーパースターの中野浩一選手の自転車  (製作 長澤義明)

 

競輪選手のレジェンドである中野浩一選手は1977~86年までの10年間、世界選手権のスプリント競技で前人未到の10連覇の偉業達成、日本の競輪の実力を世界に見せつけました。展示の中野氏のトラックレーサーは82年英・レスターで開催された大会で実際に使用されたナガサワ製の自転車となります。

スプリント競技は1対1の競技で、マススタートのケイリンとはまた違った争いとなりますが、中野氏の脚力は抜きんでていて、その他の日本選手団もレベルが高く世界選手権では好成績を残していました。ケイリン競技の五輪正式種目認定にはこういった功績があり、中野氏はシドニー五輪では先頭誘導員を務めました。

 

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シドニー五輪のペーサー

 

最盛期には売上高2兆円、4000人以上の選手が在籍した競輪も人気が低迷し各地で競輪場の廃止が相次ぎました。売上高も6000億まで落ち込み存在感が薄れていましたが、女子競輪(ガールズケイリン)の復活やマスコット戦略など懸命な活動で売上高1兆円まで回復、IT系企業に事業価値を再評価され投資が盛んになってます。

しかしながら、競輪場への来場者数は減少の一途を辿り最盛期の30分の1と振るいません。その原因にひとつに施設の老朽化であることは本ブログでも度々考証し、新施設建設の必要性を提起していますが、積年の願いに共感をいただくことはほとんどありません。

 

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深刻な問題としては、五輪正式種目となった同年にケイリン種目を含む自転車競技の規定が変更され、競輪が「ベロドローム」と呼ばれる屋内型競技場で開催されるスポーツへと厳格化されたことです。これにより既存施設は国際的には「賞味期限切れ」となり更新が必然とされましたが、対応したのは千葉競輪場のみで、日本の「競輪」と国際スポーツ「KEIRIN」が別の競技へと変質化してしまっています。千葉競輪は「PIST6」として登録選手は二足の草鞋を履き世界を目指していますが、状況は複雑で日本は潜在力を発揮できずにやきもきする状態となっています。

この企画展も競輪の現状を広く一般にもPRする目的の展示で入場料は無料、VRシミュレーターでリアルな競輪世界を体感できる展示や映像、ご当地グッズがもらえるくじびきなど楽しめます。

 

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小倉けいりんのキャラクター「かねりん」

 

私はギャンブルは一切しませんが、公器である競輪場の老朽化問題はこれからも避けては通れない課題だと思います。そのためにも公営競技の有益性を各々がしっかり再認識する必要性があるのではないでしょうか。企画展は3月31日まで開催です。

 

 

 

自転車文化センター

  • 〒141-0021 東京都品川区上大崎3-3-1 自転車総合ビル1F
  • Tel. 03-4334-7953
  • [開館時間] 11:00〜15:00 [時短営業中]
  • [定 休 日] 月曜日(祭日の場合は翌平日)
  • [入 館 料] 無料

 

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