大阪のシンボルでもある通天閣がある「新世界」は、地下鉄御堂筋線「動物園前」の北側にあり、最近では観光客も増え地下鉄のサインも「動物園前(新世界)」と併記されるようになっています。JR・南海「新今宮」と乗り換え駅で利便性が良く関西でも屈指の乗降数を誇り、多くの人が行き交う場所です。

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自転車の利用者も非常に多くみられ、駅前には溢れんばかりの駐輪車がみられます。
国土交通省の調べによると同駅の放置自転車の数は1062台、この数は梅田や久屋大通(名古屋市)を上回り、全国ワースト1の放置数だそうです。一体、なぜこのような状況になってしまったのか、現地に向かい現状を調査してきました。

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新今宮は難波の南側で天王寺の西側、浪速区と西成区の境界に位置します。
サイクルショップ203からも自転車で20分ほどの場所で、本ブログでも「じゃりんこチエ」の舞台として紹介しています。

 

社会問題が山積みの失敗都市「新今宮」

大阪市は「自転車等の駐車の適正化に関する条例」が定められ「放置禁止区域」に自転車を放置してはならないとしています。新今宮は、駅出口前の歩道のほんの一部が禁止区域に指定されていますが、ほとんどは禁止区域ではありません。したがって、市民生活に著しく阻害されるほど長期間継続して放置しない限り撤去されず、駐輪されている自転車が多い理由と一つと考えられます。

 

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周辺には無料で利用できる駐輪場があり合計で2800台以上収容できるようですが、利用者が多いため駐輪場は満車状態でスペースがなく、路上に駐輪しなければならない状況です。

新今宮駅の南側は「あいりん地区」と呼ばれる「ドヤ」が集中する地区で、路上生活が多く、維新が市政を担う以前は、暴動や路上強盗等が頻繁に発生するハードボイルドな地区で、2007年には英語講師リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人・市橋達也が逃亡中に身を隠すなど治安の悪さが指摘されています。

橋下市長(当時)は同地区の治安改善のため、路肩の糞尿汚れの美化・クスリの売人を監視するセキュリティカメラの導入・コピー商品や違法DVDなどの路上販売が行われている通称「ドロボウ市」の摘発など集中的に実施、以前に比べれば治安も少しマシになってきているように思えます。

 

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このように同地区は問題が山積みのため、自転車の利用環境の整備は後回しになっているというのが実情となっているようです。放置自転車を条例で規制できない背景には、大阪市の特異な行政や自転車小売業も絡む事情があり、この問題は複雑であまり知られていないと思いますので、またの機会に詳説したいと思います。

 

治安回復のために繰り返される荒療治

駅の北側に目を向けると大型パチンコ店「MARUHAN」が鎮座しています。

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もともとこの地は市有地で市電の車庫があり資産価値が高く、駐輪場を確保するに充分な土地がありました。

1997年に都市型遊園地「フェスティバルゲート」として再開発、開業当時は東京ディズニーランドに匹敵する人気を博しましたが、USJの開業や平成不況などで客足が伸びず赤字化、施設の売却交渉も難航し「5年間はパチンコホールにしない」という条件の下、パチンコ企業最大手「マルハン」に当初予定価格の半値以下で売却、マルハン側は「アミューズメント施設や韓流テーマパークとして活用する」としていたものの、結局は何も開業しないままパチンコ店がオープンします。橋下市長は「誠実に対応して欲しい」としながらも「5年間」という期限付き契約に「失敗の事例」と会見しました。

また、維新は貧困や高齢化に悩むこの西成区を、ミナミ中心部の中央区やサイクルショップ203がある西区と統合するいわゆる「大阪都構想」発案、2度にわたる住民投票の結果はご存知の通り廃案となりました。

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国内ワーストといえる治安の同地区も、数年前から観光客向けの民泊施設が急増、「新世界」や駅の南西側にある遊郭「飛田新地」には国内外から多くの観光客が押し寄せ、道中の商店街には中国人パブが軒を連ね、活気を取り戻してきています。

来春には星野リゾートが運営する大型宿泊施設「OMO 7」開業予定でますます注目度が高くなっていただけに、かねてからのコロナのまん延は同地区にとって本当に痛恨だといえます。

hoshino shinimamiya

今後も本ブログでは、「新今宮」の放置自転車の続報など大阪の自転車利用環境の整備状況を紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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