前回の投稿で紹介しました「自転車文化センター」には、目黒の施設とは別に外部展示室があり、自転車の歴史や技術の変遷が所蔵自転車と併せて紹介されています。
展示室は千代田区北の丸公園の「科学技術館」の2階の一部で、文化センターを運営している「日本自転車普及協会」が団体として協力支援する体制で、施設の財務負担を軽減しています。技術館はおよそ20のテーマ展示があり、自転車普及協会以外に食品・建築・医療・自動車など複数の団体や一般企業の支援により施設が維持されているようです。
施設は1964年開館と古く開館当初は多くの来場者が訪れていたそうですが、この日は数組入場者がいる程度で閑散としていました。靭公園にある「大阪科学技術館」は入場無料ですがこちらは大人950円、ちなみに目黒の「自転車文化センター」も無料です。私はとりわけ科学ファンという訳ではないので、どこに950円の価値があるかどうか皆目わからず、他の展示コーナーは一瞥程度でほぼ素通りし、2階の「自転車広場」に向かいました。
「自転車広場」には、自転車史に燦然と輝く名車や100年以上前のアンティーク車などがずらりと並び、この技術館で一番の見どころといえます。大阪には「シマノ自転車博物館」があり、大展示室で膨大な実物コレクションを見ることができ感覚がマヒしてしまっていますが、首都圏の方にとってはこの所蔵が希少なスペースとなっています。
車輪や馬車は古代文明から存在が確認され、ジェームズ・ワットの蒸気機関の開発が1769年、カール・ベンツのガソリン自動車の特許が1879年、クランクやチェーンが実装された自転車の登場は1885年と、自転車はシンプルな構造ながら長い科学技術の歴史において比較的新しい乗り物で現在も進化を続けています。
開館当初は科学熱が熱い時代でグーテンベルクの活版印刷や最先端の宇宙開発を一目見ようと来場者を集めたようですが次第に入場者数が減少、自転車振興会からの補助金や公営競技や公営くじの支援で成り立っているようです。そういえば、同館の貸会議室で自転車の展示会を見た遠い記憶がよみがえってきました。もう20年程前でしょうか。どのような運営体制になっているのか詳しくは知りませんが、何となく昭和から時が止まっているような雰囲気がします。比較として適当なのか分かりませんが、実際に自転車に乗って楽しむことができるシマノ博物館や関西サイクルスポーツセンターと違い、少し物足りない気もします。
開館から60年、ひっそりとした施設は私の目には役割を果たし終えたように見えます。科学技術の殿堂としての威厳もなく、それらへの興味よりも施設管理の悲壮感がひしひしと伝わってきました。東京にこのようなハコモノ施設が集中し飽和状態にあるのも原因のひとつで、観光資源に乏しい地方都市に移転すればその存在価値も上がるような気がします。それこそ万博のある大阪に移転すれば、再注目されるのでないでしょうか。