先月、自転車通行禁止となった自転車道「ホトトギスの道」について投稿しましたが、今後もさらにこの林道が有効活用されるように調査・研究を続けていきたいと思っております。
1977年4月号のサイクルスポーツ誌には、生駒西麓沿いのこの道以外に、大阪府下の20コースがリストされています。そのうちのひとつが西淀川区「大野川緑陰道」です。JR塚本駅北側付近から淀川と並行する形で河口付近まで約3.8kmが整備された自転車専用道です。まだ肌寒い3月上旬、大阪湾を目指してサイクリングしてきました。
西淀川区は大阪市の北西のはずれに位置し、24区あるなかでも最も影の薄い区と言っていほど行く機会に恵まれない地域です。鉄道駅はJR塚本駅・御幣島駅と阪神の姫島駅・出來島駅とあるものの下車したことはなく、これといった繁華街や観光地もありません。阪急の乗換駅の十三駅のある淀川区の西、神崎川と淀川に挟まれた低海抜地帯で、北側は兵庫県尼崎市となっていて、昭和期には大阪の鉄鋼・重化学工業の拠点として発展しました。
大野川緑陰道は、同地区のさらなる発展のため神崎川と淀川を結んでいた大野川を埋め立て、高速道路を建設する計画となっていましたが、大気汚染や公害が深刻化し周辺住民の強い反対により現在の緑道となりました。
走路は自動車や歩行者と完全に分離され、青色にペイントされ視認性も高く迷うこともありません。淀川沿いのサイクリングロードに比べて知名度こそ高くありませんが、周辺住民を中心に利用者は多く快適に走行することができます。
道沿いには公衆トイレや公園、文化施設などもあり、周辺にはコンビニやレストランやカフェも点在しています。といっても、ほとんど止まることもなく20分ほどで専用道は淀川の河口に合流します。あっという間です。
淀川沿いに出ると突然、強い風に吹きっ曝され、木々に覆われた緑陰道の快適性が改めて実感できました。淀川河口は、1月に迷いクジラの淀ちゃんが発見され、全国的なニュースとなり、にわかに注目を集めました。大阪でホエールウォッチングができるなんて滅多にないので見に行こうと思っていたのですが、淀ちゃんは衰弱し数日後にあっけなく死んでしまいました。
淀川北岸はそのまま自転車で走行できるように整備され、神崎川との三角地帯は海岸緑地「矢倉公園」となっていて大阪湾を望むことができます。
矢倉公園は2000年に整備された大阪市唯一の自然海岸公園で近隣住民の憩いの場となっているようです。私は初めて来ましたが、潮だまりや野鳥観察所などが整備され、開放的で自然を感じられます。大阪市内にもこんな場所があったんですね。
自転車を降りて園内を歩き大阪湾側の干潟に目を落とすと、ペットボトルなどのプラスチック製品のゴミが無数に散らばっていることに気づきました。ゴミの散らばり方から来園者のゴミではなく、湾内の漂流ゴミが潮の満ち引きなどで磯に打ち上がったような感じです。とても一人では拾いきれる量ではないため、見なかったことにして帰りましたが、考えさせられるものがありました。
区は地域ぐるみで清掃活動やイベントを熱心におこなっているようですが、毎年のように投棄される海洋ゴミは産業構造や文明そのものを変革しなければ減らず、深刻化しています。
西淀川区は70年代に公害汚染で人口が減少、住民が立ち上がり環境改善に必死に取り組みました。緑道の完成後は住みやすさが飛躍的に向上、汚染物質が環境基準以下になるようにコンビナートや工場と協調しながら、環境づくりに取り組んでいます。このような結果、80年代以降は人口が増加傾向に転じました。
大気汚染や公害のイメージが強い地区でしたが、実際に行ってみるととても住みやすそうな場所でした。緑陰道は西淀川区内で完結していますが、自転車道はネットワーク化することに価値があります。欧州では国を跨いだ自転車道路網が整備されていると聞きます。自転車が環境社会のアイコンとなり、政府や自治体・住民が目標をさだめて自転車の振興を目指しているようです。