神奈川県茅ケ崎市にて開催の「自転車の世紀展」に行ってきました。
展示自転車の中の1台、1969製作 ルネ・エルス「ロンシャン」を本稿では紹介します。
ルネ・エルス(1908~76)はフランスの名工で「パリの宝石」と称されるほど美しく贅沢な自転車を精力的に製作し、昭和中期以降の日本の自転車文化にも影響を与えた故人です。エルスは日本人向けにも数百台の自転車を作成しましたが、その中でも沼勉氏がオーダーした「RANDONNESE(ランドヌーズ)」と加藤一氏の「LONGCHAMP(ロンシャン)」は研究素材とされ格別なあつかいをされている名車です。
加藤氏は元競輪選手で、引退後はフランスに移住し画家として活動され、沼氏の紹介でエルスの工房を訪れ、オールメッキのこの現車をオーダーしたそうです。時期としては沼氏の「ランドヌーズ」のオーダーの2年後の69年のことで、加藤氏は沼氏のオーダー時にも立ち会っていたそうです。
エルスの自転車は1954年に日本の自転車研究の第一人者である鳥山新一氏が初めて国内に持ち込み、以来、東叡社やニューサイクリング誌を選好する当時の趣味人によって日本のツーリング車の理想像とされてきました。60年代後期は比較的舶来部品も容易に入手できるようになり、日本からの難しい注文も増加していた時期のようです。
「ロンシャン」は簡易のマッドガードが付いたロードバイクで、ホリゾンタル型の美しいシルエットをしています。ダニエル・ルブールの線画カタログでは、コロンバス製のフレームとなっていますが…
フレームパイプはレイノルズ社製のマンガンモリブデン合金、加藤氏の注文でロゴは白い塗料で手書きされています。そして、ボトル台座の位置がダウンチューブではなくシートチューブになっています。
ジュラルミン鍛造の角材から削り出された完全ハンドメイドのエルス自作のステム。突き出し部が空洞でブレーキワイヤーのストッパーが設けられています。
左/ ブレーキワイヤーは穴あけ加工されたフレーム内に取りまわされている
右/ リアのテールに反射板の付いたブルーメルの簡易フルフェンダー
駆動系などのパーツは「MILANO-SAN-REMO」のレーシーな仕様にカスタマイズされています。
右 /Fメカはカンパのレコード、フロントギアはトリプル
左 /リアメカはカンパのヌーボレコード 6スピードの高速仕様
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▲ 参考 -レイノルズフレームにカンパドライブの「MILAN-SAN-REMO」
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サドルはユニカのブラックの革貼り
ブレーキはシートステイに設けられた台座を使用、ブレーキアーチ内側とタイヤの間にドロヨケを通されています。
| Longchamp ロンシャン (1969年製)
<SPEC>
フレーム: レイノルズ531 クロモリ シルバーメッキ
変速:カンパニョーロ 3×6速
ブレーキ:ワインマン センタープル
タイヤ:クレメン ロード用
サドル:ユニカ
ステム:エルス
ドロヨケ:ブルーメル
ペダル:カンパニョーロ
この「自転車の世紀展」では東叡社のツーリング車 1968製「パリ・ブレスト・パリ」とあわせてわかりやすく展示してありました。
左/エルス「PARIS-BREST」
右/東叡社「パリ・ブレスト・パリ」